今日も一日健やかに物語を

おもしろいと思ったものを

『枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い』山本淳子著 いま、古典を読み解くのが面白い時代がきてるのでは

枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い (朝日選書)

まだ読んでる途中ですが、冒頭から面白いので記録として。

 

 

読むきっかけは三宅香帆さんの『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文 (14歳の世渡り術)』に参考文献として載っていたのがきっかけ

kenkounauma.hatenablog.com

三宅さんの著書で『枕草子』や『源氏物語』を清少納言紫式部がどんな時代にどんな思いを持って、なにを伝えたかったのか?を解説しているのを読んでこの時代に女性が本を出せたというのは何故なのかが驚きだし、いったいどう言った意図を持って、何を伝えたかったのか?を読み解いていく過程が面白く、古文にいまさらながらとはいえ、ジェンダーの問題が広く浸透してきた現代だから読み解くのが面白いのだと思う。

 

 

本書では、清少納言の『枕草子』が書かれた経緯、またその後どうやって後世に残ってきたのかを解説されていくみたいなのでいまからとても楽しみ。冒頭から、枕草子は定子の生前と死後に捧げられたものだとか、『枕草子』が定子の死後に後ろ盾のなくなった清少納言がなぜ残せたのか?という視点は、確かに言われてみればなぜそうなのだろう?そこがわかるのかも知れないといまからワクワク。

 

こうやって、いろんなことがわかると今度このへんの時代の漫画を読んでみたくなるなー

 

『植物病理学は明日の君を願う』竹良実千代 植物が枯れれば人類は滅亡する。

植物病理学は明日の君を願う(1) (ビッグコミックス)

植物が病気になることで、なにが起こるのか?それは、最悪の場合人類の絶滅である。

 

現代科学であれば人間に害を与える細菌を作り出し、そしてばら撒くことは可能であろうことを世界は知っている。そんな現代科学であれば、植物に対して害を与える細菌をばら撒くことも可能であることは予測できる。目的は交渉相手に対しての材料にしたり、戦争に勝つための手段として用いたりなど。それに対抗するための植物病理学者の物語。

 

読んでる時に思い浮かぶのは、『科捜研の女』とか、『アンナチュラル』などの科学捜査系のドラマ。なので、これはもしかしたらいつかドラマで公開されるのでは?そうなったら面白そうだし見ていたいなぁと。

 

しかし、恐ろしいのは戦争中に植物細菌を使用する計画があったこと、そしていつ、植物細菌がばら撒かれるかもしれない可能性があるということ、ばら撒かれたら世界の流通が簡単になった現代では食い止めることが困難であることは、COVID-19の例を見ればわかります。

 

細菌でなくても、小さな虫が原因の場合でもあることが作中で表現されている。こんな小さな虫が?と思ってしまう。だけど、それを探すことが出来るのはその可能性があることを想像できる人で、ちっぽけな人間がもしかしたら世間を救うことができる。

 

そんな風に考えると竹良実さんの過去作の『辺獄のシュベスタ』や『バトルグラウンドワーカーズ』などの作品に繋がる、自分の行動が自分だけでは無く、周囲に繋がっていることがテーマになっているのではないかなーと感じる。

 

是非ともドラマするくらいには売れて欲しい作品ですねー。

『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文 』三宅香帆著 この本を読めば古文への理解が深まって面白くなる!

(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文 (14歳の世渡り術)

古文、『源氏物語』や『更級日記』『伊勢物語』などなど、原典を読んだことが実は無くて、それを元にした漫画なら読んだことがあるくらいな感じなんですが、この本で解説しされているのを読むと、『枕草子』の清少納言中宮定子はそんな関係性だったの!?とか、紫式部ってもしかしたら源氏物語で意識改革を目指していたのかもしれないな?とか色んな発見があり、とても面白い読書体験でした。特に源氏物語については漫画を読んでいたからか、考えが広がって面白かったです。

 

 

⬛︎源氏物語』は恋愛は人を幸せにしないがテーマだった?

 

紫式部というと『神作家・紫式部のありえない日々を思い出すのですが、実は漫画を読んでいるときは紫式部をとりまく人間の関係性があまりよくわかってなかったのですが、これを読んでいるときになるほど!ってなったんですけと、紫式部天皇の新しい皇后に教養をつけるために藤原道長に呼ばれたのか!っていまさら理解できたり。

 

 

あとは、女は愛されても幸せになれないというテーマがあるのではとのこと。

 

なるほど、たしかに源氏物語のなかに出てくる女性たちは総じて死ぬか、亡霊となるかなど、愛された女性たちには不幸が訪れている。つまり、愛されるだけじゃだめ、ちゃんと救うための行動が伴わないと、と言うのは男側。

 

では女側はどうすれば良いのか?

 

紫式部的には源氏物語でハッピーエンドを迎えている人物を観るとわかりやすい。

それは、勉強をしている女性は少なくとも、ハッピーエンドで終わっているということ。まさに紫式部のことだ。さて、では紫式部は幸せだったのだろうか?

夫に先立たれたが、勉強していたから天皇家に仕えることができたけど、周りは漢詩を勉強したことのない教養のないひとたちばかり、そんな人たちに自分に教養があることをひけらかすと調子に乗ってるとか言われてしまうから隠したりしていた。

 

もしかしたら紫式部自体は幸せではなかったかもだけど、紫式部源氏物語で伝えたかったのは愛だけでは幸せになれない、教養があれば、生きて行く武器になる。「だから勉強しよう」と、周りを啓蒙しようとしたのではないだろうか?そうすることで、周りの女中に勉強するように促し、教養があることへの風当たりを弱くしようとしたのではないだろうか?漢詩を引用していたり、そもそも字を読めないと本は楽しめないから、必然的に勉強しなくてはいけなくなるだろうし。

自分を変えるのではなく、周りを変えようとしたのではないかな。

 

この時代は物語は和歌よりも低俗なもので、女性が読むものだと男性は考えていた。それなのに、源氏物語が宮廷で流行ったのは物語中に漢詩がふんだんに使われていて、これは教養のある文だ!と男性が褒めやすかったかららしい。

 

でも、内容は男性が愛した女性がことごとく不幸になっていく物語。そんな物語を見せられた当時の男性たちは何を考えたのかな?

当時の女性だって、立場が男性と比べて低いことに不満をもっていたのがよくわかる物語になっている。そんな物語が書けた紫式部、凄すぎます。

 

 

古文、いまの時代にも読み継がれているのは、書いてる人が自分とかけ離れた価値観を持っている人が書いた作品ではないからなんだろうなと思う。はるか昔の人だけれども、そこには現代人のような中流階級の人が書いた物語だったから苦悩することや生活に感情移入ができた。これが、超貧困層の人が書いた作品とか、それとも超富裕層の人が書いた物語だったならばたぶん現代人も感情移入できなかっただろうし、当時の人達にも流行らずに読み継がれる作品にはならなかったのではないかなーとこの本を読みながら思いました。

 

同時に三宅香帆さんの『女の子の謎を解く』を読んでおくと面白いと思うので是非。

『日本人のための第一次世界大戦史』板谷敏彦著 自由貿易が技術発展が格段に進んだ

日本人のための第一次世界大戦史 (角川ソフィア文庫)

本の冒頭に書かれている、西欧的に言えば世界大戦とは3000万人の死者を出した第一次世界大戦のほうである。というところから始まり、そうだったのか!?と驚く。

では、なぜこんなに大勢の犠牲者が生まれたのか?を技術の発展とそれに合わせた法律の改定などの流れを解説されていくのが大変面白かった。

 

風を動力に動く帆船が蒸気機関船に変わったことで、大陸間の移動日数が少なくなり、それによって貿易も盛んになっていった。自由貿易により他国に技術をもたらした反面、兵器技術の伝播も速くなり、兵器の生産性や破壊力なども上がっていく。などなど、技術が発達したことでそれを人間はどう使って行ったのか、その結果の戦争ではなにが起きたのか。これは教科書を読んだだけでは得られない情報に溢れている。


これを読むとこのころの時代を扱っている物語の面白さが全然違ってきます。

『天使の棲む家』津田雅美著 価値観が変わることで、わからなかった魅力がわかってしまうことの面白さ

天使の棲む部屋 (花とゆめCOMICS)

短編4作と、その短編4編のその後を書いた短編集。

 

4作ともに通底しているテーマは『自分が感じていることをどう定義するか』で、どれも葛藤を得て自分の状況を定義していく。4作全部とても素晴らしかった。

 

特に好きなのは『わたしは行かない』で、好きな人ができたことで自分の世界が広がり、広がったことによっていま付き合っている人とは別の人の魅力がわかるようになり好きになってしまう。

 

それを彼氏に対する裏切りと断ずることは簡単だけと、そうじゃなくてこの新しい魅力を発見できたことがとてもキラキラと輝いて見えるんです。自分の世界しかなかった人間が、世界が広がったことでわかってしまう魅力という。

 

この三角関係が、とても面白くて、好き。

 

『青野くんに触りたいから死にたい(10)』椎名うみ著 親には親の、子には子の人生がある

青野くんに触りたいから死にたい(10) (アフタヌーンコミックス)

これはただの恋愛物語ではなくて、本当に幸せになるために恋人同士はなにを解決しなくてはいけないのか?を追求する恋愛物語。

 

今巻ではついに青野くんの母親にスポットが当たり、子供時代の青野くんの家庭での立場は悲惨だったことがわかります。

 

青野母は夫を亡くし、シングルマザーとして子育てをしなくてはならなかった。でも彼女はその生活には耐えられなかった。

 

でも、この母親の弱さを否定出来なくて、これって、あり得たかもしれない優里ちゃんの姿でもあるからなんですよね。

 

もしも、青野くんが霊体として優里の目の前に現れなかったら、優里も青野母のように、愛しい人をなくし、その死を受け入れられず、寂しさを忘れさせてくれる相手が現れたら流されてしまうかもしれない。

 

青野くんから見た、優里と青野母は似ているんですよね。
だから青野くんは母の面影を優里に見たのかもしれない、そして今度こそ救おうとしたのかもしれない。救うのであれば、その人が過去にどんなトラウマがあるのかを理解してその状況からの脱出の手伝いをすることが必要です。

 

優里のトラウマは家族に愛されなかったこと、そして青野くんのトラウマは母親を救えなかったこと。このトラウマからどう脱出、解決するのか、今後の展開がとても楽しみです。

 

『新聞・テレビ・ネットではわからない日本経済について髙橋洋一先生に聞いてみた 』高橋洋一監修 とてもよくわかりやすい日本経済入門書

新聞・テレビ・ネットではわからない日本経済について髙橋洋一先生に聞いてみた (Re Seriesまなびを、もういちど。)

最近になって存在を知ったこの方、高橋洋一氏。YouTubeで動画を見たことが知ったきっかけだったなぁ。

 

正直に言って、この本のなかに書いてある用語「名目 GDP」「インフレギャップ」「消費者物価指数」「財政出動」「利上げ」「マネタリーベース」「金融緩和」「緊縮財政」などなどなど、、、どれもこれも聞いたことある言葉くらいの認識で、説明できるか?と言われたら全く出来ない。


そんな用語をこの本では、実際のデータを元に解説されており、かつ最近の日本経済を元に話をしているので実感として納得でき、頭に入ってきやすい内容でした。


いま現在、モノの値段が上がっているのはウクライナ戦争によるエネルギーなどの高騰が背景にあるだけで、インフレ=お金が余ってて物が無い状態ではない。なのに金融緩和ではなく利上げを行おうとしてる。それでは企業が賃金を上げても、利上げで企業は資金を銀行から調達できず、雇用も減るのでは?と本書を読んで得た情報だけでもそう思ってしまう。


また、防衛費という名目で福島の復興税を一部転化し、2037年までで終わる予定だったものを無期限にしようとしている。そんなことをしなくても財源は国債を発行すれば解決できるが、それをしないのは財務省は税金を増やすと各省庁へ渡せる予算が増え、官僚はそれの見返りとして財務省の官僚の天下り先を斡旋するという構造があるため、増税が必要であるとい空気を作り出そうとしている。などが書かれており、大変興味深かった。


この本は経済用語を学ぶ入門書としてとてもわかりやすく、ニュースなどで使われる言葉を理解するのにとてもわかりやすい本でした。でも、まだまだ勉強したり、情報を得ないと本当に本書で書かれていることが正しいのかが分からないのでもっと精進せねば、、、。

 

同じような経済本として井上純一のシリーズも入門書としてわかりやすかったです。今回の本を読む前に読んでおくと理解が早いかも。漫画なのでサクッと読めるのもまる。