今日も一日健やかに物語を

おもしろいと思ったものを

『貴女が生きて』島田ゆうか著 私にとって本当に大切なものは。

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www.melonbooks.co.jp

こここまでで、島田ゆうかさんの作品の『胡蝶の夢』と『胡蝶の惰眠』を読んできていて、今回はどうなるんだろう?とドキドキでした。シリアス一本とギャグ一本の半々できてるのでこのどちらかだろうなとは思っていて、でも本のタイトルからしてすでに不吉な感じはするんですよね・・・。

ネタバレがあるので気にする人はご注意を。一応。

 

 

 

1ページ目を開いたら天使の格好をした日菜ちゃんがいて台詞が

「どうも日菜ちゃんです ハロウィンバージョンでお送りします」

とあって、今回は惰眠のようなギャグか!?いや待て落ち着け、天使の格好をしてるんだぞ?まだもしかしたら・・・。てな感じで読み進めていくと、紗夜さんが泣いてるじゃないですか!?もうこれはシリアス決定じゃないですか?さてどうなるのか・・・。


でもですね、途中までは期待してたんですよ。まだ日菜ちゃんのコスプレなだけかもしれないじゃないですか、だけどそんな期待を打ち砕くようにコスプレが脱げないって、やっぱりもう日菜は・・・。(泣)

 


今回の話は劇中の描写やあとがきを見る限り、七夕イベントを越えて二人の関係が和解の方に向かったあとの話なのだと思うのですが、これは『胡蝶の夢』のあとということなんですかね?

kenkounauma.hatenablog.com

 

もしそうだとすると、もうなんていうか悲しみが激増の倍増なんですけど・・・(泣)
胡蝶の夢』で紗夜と日菜は悪夢を見続けていて、でもそれが七夕イベントを経て紗夜が日菜と向き合うことを決めて、行動に移したことによって悪夢から抜け出すことが、やっと、やっとできたというのに!!それなのに!こんな展開ってあるかよぉおお!!(号泣)

はぁ…、はぁ…。取り乱しました。


あとがきを読むとこちらはTwitterにて発表していたものを完結させたものらしいの描かれた時系列がわからないのですが、『胡蝶の夢』と繋がっている感じがします。『胡蝶の夢』では紗夜が日菜を庇ってという話だったのに対して、こちらではその逆で、日菜が紗夜を庇ってという話になっています。 ちょっと調べました。『貴女が生きて』の前半部分のまでの方が先なんですね。なのでここからは妄想です。

 

胡蝶の夢』で日菜は紗夜に嫌われていると思っていたが、本当はそうじゃなかった。庇って死ねるくらいに愛していたんだ。ということに気がつき、また紗夜も日菜のためならば迷わずに自分の命を差し出せると思っていたんですよね。

このことがあるから『貴女が生きて』で、日菜のためなら死ねると覚悟が決まっていたのにも関わらず、日菜のために死ねなかった、日菜を犠牲にしてしまったことが紗夜にとってどれほどの絶望だったのかということになるんですよね。だから、日菜の格好をして、日菜の代わりに日常を過ごすことに決めたのは、日菜を死なせてしまった紗夜の後悔や罪の意識の現れなんだと思うんです。いまここにいるのは私ではなくて、日菜なんだと思うことで心の平成保とうとしたではないかな…。

 

だけど、ことあるごとに、特に家に居るときにどうしても気がついてしまうんですよね、日菜が居ないという現実に。そのことに耐えきれなくなった紗夜さんは・・・。

 

いやぁ、壮絶だった。『胡蝶の夢』とは繋がってないと思いますが、繋がってると見ると面白いよなーって感じなの妄想で繰り広げただけですが(苦笑)

 

この『絶望』を感じるくらいに限界まで相手のことをが大切であると、自分の生のなかでなにが一番大切なのか?が突きつけられる設定って、良いですよね(笑)

思い出すのは『天気の子』の劇中にある台詞で

「ただまあ、彼はまさにいま人生を棒に振っちゃってるわけでして」 

「そこまでして会いたい子がいるってのは、私なんかにゃ、なんだか羨ましい気もしますな」 

「そんな話、俺にされても……」

俺は憮然と刑事に言う。そこまでして会いたい人。帆高にはいるのか。俺にはどうか。全部を放り投げてまで会いたい人。世の中全部からお前は間違えていると嗤われたとしても、会いたい誰か。 

 

小説 天気の子 (角川文庫)

 

これですね、あとは天気の子展で見かけた新海真監督のインタビュー記事からの抜粋で「命を全部使いきる、そんな青春映画を作りたい」だったかな?確かそんな感じのことが書かれていて、印象に残っているんですが、『貴女が生きて』の紗夜さんには居るんですよね、そこまでして会いたい子が。そりゃーもうね、そんなに思える相手がいるんだとしたら羨ましいですし、逆にそこまで思ってくれる相手がいたらそりゃもう嬉しくなっちゃいますよね!?『風と木の歌』もそうだったなー。

 

あとは劇中の設定がすごいなーって思いました。血液で同じなのに混ぜちゃいけない組み合わせとかあるんだとか、紗夜さんのモノローグにある「あなたと私は違いすぎた」って言うのもいいなぁって思います。表紙がここまで日菜だったから読む前は今回も日菜だと思っていたのですが、読み終わったいまはこの子は・・・。

 

あ、あと!紗夜さんがボロボロ泣いてるシーンがめっちゃ好きです!!涙!