今日も一日健やかに物語を

おもしろいと思ったものを

『喫茶フロンテーラ』 ちょめ著 背景の書き込みから感じる、世界がそこにあるという感覚。

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先日(令和元年5/12)のコミティアでの戦利品です、立ち読み(?)させて貰い、建物などの背景の美しさに魅せられてこれは素晴らしいものだと自分のなかのゴーストが囁いたので購入しました。

ネタバレが多少あるので注意を。


世界がそこにあるという感覚とタイトルを書いたのだけれども、こちらの作品に描かれている建物や、内装、小物、服装などの様々なものが細部まで描かれていて、美しく感じました。物語というものは人と人の感情や会話で成り立つものだと思っているのですが、そのなかで世界、物語の中の登場人物がどういった世界で生きているのか?という空白の部分を描くことで、登場人物はこういった世界で生きていて、だからこの人はこういった価値観をもっているんだ。という納得感、そして物語への没入感が全く違うものになると思う。例えば『マッドマックス』のような世界で生きている人間がどういう価値観を持つのかを想像してみると、あの世界で生きるのであれば力こそが正義、言葉など無価値。な世界なのではないかなーと想像できる。あ、こちらの作品は全然そういった世紀末な世界ではないです(笑) 

こちらの作品を簡単に説明すると


現代日本のそこそこ栄えているどこかの街。そんなところをぶらついていた女の子が偶然見つけた隠れ家的な喫茶店で体験した、SF(少し不思議)な物語。


なんというか、行きつけの、自分しか知らない喫茶店てものすごく憧れしまう。この憧れはいったいなんなのだろうか?秘密基地をつくる少年心かなー?


こちらの女の子(そういえば登場人物に名前がない)も、ふと見つけた看板に興味を持ち、隠れ家みたいでわくわくすると言っていて、その気持ちわかるなぁと。路地裏には秘密の入り口があって、そこには素敵な場所があった。みたいなことを路地裏を見つける度に想像してしまうなぁ。『猫の恩返し』とか、色々な作品をみてそういうものに憧れを抱いているのかもしれないなー、自分は。


茶店で遭遇した少し不思議な体験

路地裏にある喫茶店、そこで遭遇した不思議な体験。その謎を解いていく流れは、日常に起こった冒険で、平凡な日常を面白くするスパイスとしてとてもいいなぁと思う。

というか、い、いいなぁ・・・、この窓一枚挟んだ向こう側には別の世界が広がっていた。なんていうのはほんとにわくわくする。こちらの作品のタイトルのフロンテーラを検索してみると・・・。


ラストで女の子が証拠として押さえていた写真を消すところは、この喫茶店の謎を解いてみようとか、友達に教えてあげようとか、SNSにあげてバズろうとか思っていたけど、喫茶店のマスター(?)に招かれた場所で視た景色を視て、女の子にとって喫茶店が『不思議な秘密がある場所』だったのが『素敵な秘密のある場所』変化したんだと思う、だから目がもの凄くキラキラしていたのじゃないかな?そして、素敵な秘密のある場所なったここを誰にも教えてあげたくなくなったのだと思うのだ。だから、写真を消したのだと思う。誰かに教えてしまったら、この喫茶店がなくなってしまうような気もするしなぁ。


細部まで描かれた世界

女の子の服装からはお洒落に気をつけているのだろうなと感じられるし、暮らしている部屋からは、この子が独り暮らしをしていて、部屋は綺麗だから几帳面で、でも大きいぬいぐるみがあるから少し温もりが欲しいのかなとか、生活圏内がどんな場所か、マスターの服装、内装とか。背景が細かく丁寧に描かれているから、本を広げた瞬間にその世界がそこにあるんだと感じられて、特に8~9ページはの喫茶店の回りを上から視ているコマがいいなぁと思う。この演出は様々な作品で視るのですが『ペンギン・ハイウェイ』『ドラえもんのび太の月面探査機』『未來のミライ』『ガールズアンドパンツァー』

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doraeiga.com

でも使われていた演出で、このカメラをどんどん引いていって最後にその世界がどういったところなのか?というのを見せてくれる演出が自分はとっても好きで、世界とは自分(内)だけじゃなくて、外にも色々なものがあるのだという、世界を俯瞰して視る、新たな視点を得られる。なんというか感動するんだ、世界は広いんだって。あとは新海誠監督の作品なんかも世界の綺麗さを感じる作品ですね。

 

とても、良い漫画体験だったなぁ。それと、同時に購入した『錨を揚げる』をこちらの作品のあとに読んで、同じテンションで読んでいたので、こちらの物語はショックだった・・・。こちらの感想は別の記事に。