『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文 』三宅香帆著 この本を読めば古文への理解が深まって面白くなる!
古文、『源氏物語』や『更級日記』『伊勢物語』などなど、原典を読んだことが実は無くて、それを元にした漫画なら読んだことがあるくらいな感じなんですが、この本で解説しされているのを読むと、『枕草子』の清少納言と中宮定子はそんな関係性だったの!?とか、紫式部ってもしかしたら源氏物語で意識改革を目指していたのかもしれないな?とか色んな発見があり、とても面白い読書体験でした。特に源氏物語については漫画を読んでいたからか、考えが広がって面白かったです。
⬛︎『源氏物語』は恋愛は人を幸せにしないがテーマだった?
紫式部というと『神作家・紫式部のありえない日々』を思い出すのですが、実は漫画を読んでいるときは紫式部をとりまく人間の関係性があまりよくわかってなかったのですが、これを読んでいるときになるほど!ってなったんですけと、紫式部は天皇の新しい皇后に教養をつけるために藤原道長に呼ばれたのか!っていまさら理解できたり。
あとは、女は愛されても幸せになれないというテーマがあるのではとのこと。
なるほど、たしかに源氏物語のなかに出てくる女性たちは総じて死ぬか、亡霊となるかなど、愛された女性たちには不幸が訪れている。つまり、愛されるだけじゃだめ、ちゃんと救うための行動が伴わないと、と言うのは男側。
では女側はどうすれば良いのか?
紫式部的には源氏物語でハッピーエンドを迎えている人物を観るとわかりやすい。
それは、勉強をしている女性は少なくとも、ハッピーエンドで終わっているということ。まさに紫式部のことだ。さて、では紫式部は幸せだったのだろうか?
夫に先立たれたが、勉強していたから天皇家に仕えることができたけど、周りは漢詩を勉強したことのない教養のないひとたちばかり、そんな人たちに自分に教養があることをひけらかすと調子に乗ってるとか言われてしまうから隠したりしていた。
もしかしたら紫式部自体は幸せではなかったかもだけど、紫式部が源氏物語で伝えたかったのは愛だけでは幸せになれない、教養があれば、生きて行く武器になる。「だから勉強しよう」と、周りを啓蒙しようとしたのではないだろうか?そうすることで、周りの女中に勉強するように促し、教養があることへの風当たりを弱くしようとしたのではないだろうか?漢詩を引用していたり、そもそも字を読めないと本は楽しめないから、必然的に勉強しなくてはいけなくなるだろうし。
自分を変えるのではなく、周りを変えようとしたのではないかな。
この時代は物語は和歌よりも低俗なもので、女性が読むものだと男性は考えていた。それなのに、源氏物語が宮廷で流行ったのは物語中に漢詩がふんだんに使われていて、これは教養のある文だ!と男性が褒めやすかったかららしい。
でも、内容は男性が愛した女性がことごとく不幸になっていく物語。そんな物語を見せられた当時の男性たちは何を考えたのかな?
当時の女性だって、立場が男性と比べて低いことに不満をもっていたのがよくわかる物語になっている。そんな物語が書けた紫式部、凄すぎます。
古文、いまの時代にも読み継がれているのは、書いてる人が自分とかけ離れた価値観を持っている人が書いた作品ではないからなんだろうなと思う。はるか昔の人だけれども、そこには現代人のような中流階級の人が書いた物語だったから苦悩することや生活に感情移入ができた。これが、超貧困層の人が書いた作品とか、それとも超富裕層の人が書いた物語だったならばたぶん現代人も感情移入できなかっただろうし、当時の人達にも流行らずに読み継がれる作品にはならなかったのではないかなーとこの本を読みながら思いました。
同時に三宅香帆さんの『女の子の謎を解く』を読んでおくと面白いと思うので是非。