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『ラスト・ジュブナイル』スクさん 子供から大人への成長過程

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読んでいてすごくツラかった・・・。でもこのツラさがこの作品の良さなんです!優しくて、流されやすい沙綾という子と、人との好きがわからなくて、あまり自分を大切にしていないたえという子。沙綾は高校の卒業式の日にたえに告白するんですが、たえは恋という感情がわからなかった、だからたえは沙綾が好きだけど付き合えなかった。ここで二人は傷を負ってしまったのでしょうか、その傷を癒すためなのかはたま自棄になったのか、沙綾は新歓飲み会で親に注意された飲酒をしてしまい、先輩(女)にお持ち帰りさてれしまうし。たえはバイト先の先輩と性交してしまう。

このたえの行動が最近読んだ『百合のリアル』牧村朝子著

百合のリアル 増補版

百合のリアル 増補版

 

 これはリアルレズの本なんですがで、この本のなかで

著者は女性が好きな自分はおかしい「正常じゃない」、だから沢山の男性と交際して男性を好きになり「正常になる」ことを目指していたみたいでなんですが、この「正常じゃない」という感覚がたえには有ったのだとおもうのだ。たえはいままで生きてきて色々な恋の物語やラブソングに触れてきたはずで、でもその「恋」という感覚がわからなかった。そこに紗綾から告白されてしかも初めて(?)の告白が「女性」からのもので、それにドキドキしない自分はたぶん女性が好きなんじゃなくて、男性が好きなんだと思い、男性と性交までしてみる。これって「正常」を探してたからの行動だよね。んー、というか沙綾からの好きがわかりたかったからか、作中でもそう言ってるしなぁ。

そんでもってこの「好きがわからない」っていうのは『やがて君になる

の侑もそうですよね。ただ彼女は同じ生徒会の聖司から「自分のことよりも七海先輩のことを心配して、それって七海先輩のことが特別なんだなぁって」と言われて自分のいまのこの感情が「好き」なんだと気がつくわけですが。たえはそういう風に人から言われなかったから、沙綾のことをずっと考えてた理由がわからなかったんだとおもうんですよ。ふたりとも好き同士なのに、すれ違いや勘違いで距離が縮まらない。かー!ツラい、ツラいなぁ(泣) でもたまにはこんなツラさもまた良い・・・。

 

表紙の沙綾とたえが良いですーー!ちょっと成長して大人っぽくなったけど内面はまだまだ子供っぽさが残ってる感じが出ているよーな、目を合わせられない沙綾と目をみてわかろうとするおたえのようにも見えるしえもえもだー!

 

ふたりの行く末は明るいとは言えない、ですが歩き出せたのだからこの二人は進んでいけるでしょう。はー、幸あれ。 バイト先の先輩は夜道に気を付けて。