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おもしろいと思ったものを

『DEPT』板路 夕著 次世代の物語。これがコミティアの素晴らしいところなのかもしれない。

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板路夕さん本感想part2です。
板路夕さんの本を今回のコミティア129で沢山手に入って、どれも素晴らしいなぁとなっててほくほくしています。

part1はこちら

kenkounauma.hatenablog.com

全体を通して感じることとして生と死の狭間を覗き込んでいるような・・・と思っていたのですが、いま読み返してて、そうか、こういうことか!と思ったんです。結論から言うと『狂った世界で生きる人々』の物語だと思ったんですが、そこに至るまでをつらつらと書いていきます。

 

読み返したあとに、『天気の子』で須賀さんが言っていた「世界なんてさ──どうせもともと狂ってんだから」を思い出したんです。今回手にいれた板路夕さんの本は全て現代をベースにファンタジーが挿入されてて、なんというか世界が狂っているということを世界観から感じる。でもその狂った世界で主人公や登場人物たちは『普通』に暮らしてるんですよね。この狂った世界でも普通に暮らしていく、暮らしていたいと思っているんだ!と思うんですよ。

 

『天気の子』を観たときに狂った世界でも、滅亡した東京でも、この世界で生きていたいですか?ということを感じたんですが、帆高や陽菜はそんな世界でも生きたいと思える、僕たちは大丈夫だ!!と高々に宣言した!と感じたんです。

kenkounauma.hatenablog.com

 

そして、板路夕さんの作品を読むと、どう考えても狂った世界で、生きたいと思っているように見えるんですよ。いや、そんな思ってるとかじゃなくて、当たり前だよねっていう感覚で生きているようにしか思えないんです。

 

ここがすごいんです!!もしも、この物語がビルドゥングスロマン、成長物語であれば『じゃあこのセカイをどう救うですか?』とか『このセカイにどう関わっていくんですか?』という問いを持ちながら進んでいくはずなんです、そして「いや、僕には救えない・・・」とか言って終わっちゃうんだと思うんです(『新世紀エヴァンゲリヲン』ですね)。

 

だって、セカイを救うなんて個人でできるわけないからこんな風な結論に至るんだと思うのですが、それが『天気の子』でその結論に対して答えを示されてて、それは「世界なんてさ──どうせもともと狂ってんだから」と言っているように、世界なんて狂ってるんだから救わなくたっていいんだよ、というか救わなくたって僕らは普通に暮らしていくよね?この世界で。ってことなんだ。っていうのを下記の動画を聴いててなるほどなーと思ったんです。

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これを踏まえて板路夕さんの作品群を読むと、この世界は狂ってるってことはもう規定事実として登場人物たちの感覚としてあって、その上で

 

『この狂った世界でどう生きていきますか?なぜ生きようと思えるんですか?』

 

ということを描いているんですよ!

 

もう凄くないですか!?これが次世代の物語なんだ!いまの僕らの時代感覚の物語なんだ!!と思って板路夕さんすげーーー!!!って感動しています。これは同人誌だからこそ、コミティアという若いクリエイター達が発信している物語だからこそ、このような次世代の物語が出てきたのかな?と思います(適当)。

 


って、ぜんぜん『DEPT』について語ってないのでここからネタバレありながら書いていきます。

 

さて、上で長々と板路夕さんの作品は『狂った世界で生きる人々の話』と言ったですが、『DEPT』だと現代世界に宇宙人?が地球にやって来ててそれと共存する人間という世界観、生きている世界が狂っていることが視覚的にわかります。そんな世界で、生きている主人公のルイコは?というと普通にその世界を受けていれて生きていることが描かれています。

 

まず、侵略者であるはずの宇宙人に対して、とくに敵対意識を持つことなく、むしろそういうのもいる、だからどうするか?を実践しています。いまから自分が食われるかもしれないのに、それを冷静に対処しているのは、そういう宇宙人もいることを知っているからなんだと思うんです。知っているから、自分が喰われる側であることを受け入れているから、冷静に対処できたのではないかと思います。自分を捕食しようとした相手に空腹であるなら、ご飯を食べさせてあげているのが、あぁ受け入れいるんだなぁって感じます。

 

ラストで描かれるルイコのモノローグ、ここも上記で語ったことをふまえて考えると、地球を離れるべきだ。と言っている人たちに対して、遠くをみるばかりじゃなくて自分の回りをみてみようと言っているように感じます。神の居なくなった世界での新しい調和を見つけ出そうしている人たちに、いや、元々調和なんてなくて世界は狂っているんだよ、でも、そこに実は隣人はいるんだよと。狂っている世界にみんな生きているんだよと言っているように感じました。

 


それにしても『DEPT』は世界観設定が壮大な感じがして読んでてわくわくします、この世界はいったいどうなってるんだ!?ってなります。もしかして前作があったりするんですかね?あるなら是非とも読んでみたいな・・・。

こちらの物語、まだいろいろな設定が隠れていそうなきがするのでこの先を観てみたいです、気になる!


あ、あといろいろと小ネタかな?って思うところがあったりでそこも気になるところですね(笑)(恐竜のぬいぐるみ、tシャツのセンス・・・まさかっ!?)