今日も一日健やかに物語を

おもしろいと思ったものを

『ブルーモーメントの娘たち』たいぼく著 世界は残酷で美しい。

f:id:kenkounauma:20190527005955p:plain
ec.toranoana.shop

 

読んでいることを前提に書いてますのでネタバレあります!

 

 

 

最初読んだときは二人の女が○してしまったので、それを処理しに行くお話にかと思ったんですが、ラストまで読んでようやく、これが一人の人間の二重人格の話なんだと理解しました。


読んでいて、『さよならの朝に約束の花をかざろう』ででてくる、あのなにもかもを剥奪されたレイリアのことを思い出しました。人が世の中に絶望して、もうどうでもよくなる状況とはこういったものであるだろうと。

さよならの朝に約束の花をかざろう (特装限定版) [Blu-ray]

しかし、なぜ彼女は外の世界に飛び出せなかったのか?を考えてしまうのですが、彼女が二重人格であり、そのことに支えられていま生きていると思っていたからではないだろうか?そうすると、父親にも支えてくれる人間さえいればいつかは全うな人間に戻るであろうと信じていたから、父に寄り添うことを選んだのではないだろうか?

母親が見当たらないので、そこにも理由はあるのかもしれませんね


恐らくこの漫画で伝えたかったメッセージは 『私はもしこういうことがあっても、車で一緒にどこにでも行ってあげるよ』ということだと思うのだ。


だから、心が壊れそうなユマに、琥珀が寄り添ってあげるのはそういうことなのだろう


ラストで人生は終わってくれないとある。もし、この言葉が最初の一ページ目にあったら地獄は終わらないのだ、という意味に見えてしまう。だけど、ラストまで読んだ人がこの言葉を見たとき、地獄のなかにも希望を見いだせると思うのだ。


というか、自分は見いだしたい!だって人生とは地獄なのだとしたら生きていることに絶望して、生きたいなんて思わないじゃないですか?たぶんこれって最近自分の心を捉えて離さない作品の『私に天使が舞い降りた』の劇中劇『天使の瞳』でアネモネが愛するものを見つけた時点で人生とはいきる価値があったのだ。という答えをだしている。こちらの作品でも琥珀は彼女を助けますよね、でも、琥珀が彼女を助けたいと思っていないのならば助けないという選択枝もありえるはずなんですよね。でも琥珀は助けます。ちょっと違うんだけど壊れそうな相手を助けるために行動するのは『フルーツバスケット』の龍のエピソードを思い出すのですが、彼は愛する彼女のために行動します。

kenkounauma.hatenablog.com

フルーツバスケット BD Vol.1 [Blu-ray]


琥珀は、ユマを助けます。そしてその後の行動を見ていると、琥珀も彼女の存在が必要だったのだとわかるんですよね。だって、琥珀の行動は明らかにユマが楽しくなるように行動しているんですよ。これって、愛からくる行動だと思うのだ。(琥珀で調べると、石言葉で「抱擁」という風な意味付けをしているようですね) だから、自分はこの物語が『この世界には絶望もあるけど、愛もある。だから生きるにたる』と言っているんだと思うんですよ。 これを書いているときに映画を観に行ったんですが、予告が流れている最中に「あー、これやるんだ観たいなー」って思ったときにハッと気がついたんですが、未来に楽しいことが待っているなら生きることに希望が持てるなということに気がついたんですよ、そう思ったら少し泣きそうになった…。


なにが言いたいかというと、琥珀とユマは車で移動しながらラーメンを食べたり、お寿司を食べたり、かき揚げそばを食べるじゃないですか?そうすると、こんなに美味しいものがあるんだって、気がつくじゃないですか?ということはまだまだ世の中には美味しいものが待ってるんだ!って思いますよね?それって生きる希望になりえないだろうか?と思うんですよね。


ちなみにこれって『ワイドアイズシャット』や『バトルロワイヤル』あと最近やった『缶詰少女ノ終末世界』なんかの作品で語られているテーマである『メンタル(精神)の檻から脱出するなら、フィジカル(身体性)を取り戻せ!!』って奴ですね。どうやら精神と身体は繋がっていて、どちらかが満たされればもう一方も満たされるみたいなんですよね。 だから、精神的に絶望したら、美味しいものを沢山食べて身体の方を満たすことで精神の回復を図るのはその通りだよねって思います。

 

バトル・ロワイアル 上  幻冬舎文庫 た 18-1

アイズ ワイド シャット (字幕版)

海…、『錨を揚げる』でも海が出てくるけど、なんで海なのだろう?いま思ったのは、海ってのはなんか全てを抱擁してくれそうな感じがあるからなんかなーと、調べれば出てくるんかな…?

kenkounauma.hatenablog.com

 

dot.asahi.com