『重版出来!』2016年 野木亜紀子脚本 原作松田奈緒子 キラキラするために必要なものはロールモデルなんだ。
おすすめされていた、『逃げるは恥だが役に立つ』や『アンナチュラル』を見るのにAmazonプライムに加入して、そのどちらもが興味深くて面白かったんです。 それで同じく『重版出来』をおすすめされていたので見てみました。面白かったですね。黒沢の新人なのに怖気ることなく、どんどん仕事に関わっていくところがすごいなぁと思いながらもみていました。
ただ、第一話を見ているときは結構違和感があったんです主人公の黒沢さんは新入社員として漫画の担当編集として配属されているわけですが、その新人が誰も気がつかなかった描いているときの姿勢が変わって目線が低くなったことで絵が変わってしまった。ということに気が付くんですけど、これに気が付けたのが通っている本屋で知ったことが切っ掛けになっているんですね。
でも、漫画を描いたことがない人がそこに気が付けるのか?と思ったんですね。実際見ているときにえっ?そうなの?と自分でも目線を変えながらノートに丸を描いてみることでようやく納得できたくらいでした。
だから新人の黒沢がそれに気が付けたことがすごい!!と思うのと同時に絵を描いたことのない人間がそこに気が付けるのだろうか?とも思ったんですね。だから、このドラマが今後も同じように新人の黒沢が新人らしい常識にとらわれない目線で物事を解決していく!という物語のがこのドラマの流れなのかなぁと予想していました。なので、もしそういう流れの物語だった場合最後まで見続けることはなかったんじゃないかな。
ところが、2話では同じく違う部署の新人営業である小泉くんの物語になるんですね。これがとても面白かった。
小泉くんは営業にいく本屋の店員からは幽霊君と呼ばれているほどに存在感の薄い、印象の薄い営業をしていて、それは彼は本当は配属されたかったのは営業ではなくて、情報誌の編集がやりたかったので、自分がやりたかった仕事とは別の場所に配属されたで仕事にやる気を出せなかったんですね。これは俺のやりたい仕事じゃないってな感じで。
いやぁ、これはわかるなぁと思うんですよね。命令されてやる仕事ってどうしても、なんでそれを俺がやらないといけないんだってなって、どうにも気持ちが入らないんですよねぇ。まぁ、腐っていても解決しないので結局はやるしかないんですけど。
んでね、小泉くんはとある本がいま話題なので、それを各本屋を回ってきて見本誌を置かせてもらったり、売り場の目立つところに置いてもらったり、本が売れるように営業に行って来なさいと言われるんですね。そのとき、営業部に応援に来ていた黒沢が一緒についてくることになって、二人で営業回りに行くんです。
最初小泉くんは、黒沢に対して女だから自分の好きなところに配属されたと思っていて、羨ましさからくる嫉妬心でいい印象を持っていなかったんですけど、黒沢が元気よく、エスカレーターは使わずに階段をつかったり、どんどん書店員に話しかけたり、どんなことにも興味津々な姿を見せたり、時には自分では思いつきもしなかった場所に本を置いてもらうことを提案して、それを実現してみせたり。
黒沢のその頑張っている姿をみて小泉くんは「なんでそんなに頑張るの?」と不思議に思うんですね。彼にとってはやりたい仕事ではないこの仕事は頑張ったって意味のないことであると考えているので、頑張って仕事をしようとはしてないんですね。それに対して黒沢は、応援してくれる人がいてくれることが嬉しかったから頑張ろうと思えた。これって「頑張れ」に対する認識の違いなんだなぁと思ったんですね。
小泉は頑張れって言われたら「もっとやりなさい」に聞こえて、自分的には「もっとやってる」にもかかわらず、それ以上にやりなさいと言われてるように感じて、応援ではなくて、命令のように聞こえてたんだと思います。それに対して、黒沢にとっての頑張れって「応援してる」なんですよね。たぶんこれって、どっちも認識としては合ってるんだと思うんですよね。ただそれが言われた時の状況によって解釈が違ってしまったわけなんですよね。
そんな黒沢の姿や、黒沢の提案を喜んで受け入れてくれて全力で答える書店員の姿を見ることで、小泉は自分のやっている仕事の可能性と楽しさに気が付くんですね。
いままでの彼にとって、仕事とは命令されてやらされるもので、自分の思い通りにはできないものだったけど、自分の仕事がなにに繋がっているのかを知っていはいたのかも知れないけど、実感したことはなかった。
だけど、実際に体験することによって自分の仕事が書店員、作家、読者、会社というとても広範囲に影響を与えることができる仕事なんだ!ということに気がついたんですね。
なんでいままで気がつけなかったのか?を考えると、小泉にやる気がなかったというのはもちろん問題なんですが、それよりも先に、仕事をする上でのロールモデルが存在しなかったことが彼にとっての不運だった。それが黒沢という仕事を熱心にする人間を近くで見て、体感することで、仕事ってのはこうするとキラキラするんだ。ということを知ったんです。
仕事でもなんでもいいんですけど、目の前の光景が輝くためには頑張らないといけないんだけど、そもそも頑張れない、気持ちがわかない。といったときにじゃあどうすればいいのか?に対する答えとして、この第2話の物語が答えなんですよね。それが
ロールモデル(見本となる人)を見つけること。
見ていて、『宇宙よりも遠い場所』の玉木マリと小淵沢報瀬の関係を思い出しました。なにもない毎日(永遠の日常)を過ごしているキマリが目的をもって行動している報瀬を見つけたことで、目的意識をもって生きることのキラキラを見つけた。でも、よりもいは目的が最終的な到達点ではなくて、目的を目指したことによってできた友達が大切なことなんだと言っているんだと思うんですね。
小泉くんは仕事の楽しさを見出したわけですが、第2話で安井が「仕事に人生かけてもねぇ」と言うんですけど、安井は昔仕事に人生をかけていて、休みを返上して自分が好きになった作家さんに連載をしてもらおうと頑張って、連載をしてもらえることができたのだけど、でもそれがあっさりと外部によって取り上げられてしまうことを経験しているんですね。目的というのは簡単になくなってしまいます。黒沢がケガをして柔道を辞めなくてはいけなかったことのようにですね。
でも、そこで諦めて生きてしまうと、なにもない毎日が待っているだけで、楽しくはないんですね。いつまでたっても眩しいだけ。『少女歌劇☆レヴュースタァライト』の大場ななですね・・・。『1518!』の烏谷公志郎の挫折から始まる物語も同じテーマなのでおすすめです。
だから、楽しい、キラキラした日々をすごすためにはローモデルを見つけることなんじゃないかなぁと思います。あとは黒沢がやったように、なんでも一生懸命にやってみるのも大切なんだろうなぁ。
あとは、この2話で描かれる横のつながりも素晴らしい気づきだよなぁって。他業種が協力することで、大きなうねりを作り出すことができるという、同じ脚本家のオリジナルドラマ『アンナチュラル』では他業種は敵みたいな描かれかたをしていて、違和感があったんですよね。でも、そうじゃなくて協力しあうことができるものであるっていうのが社会であり人間なんだと思うので。まぁ、悪く言えば流行を作り出すことができるってことでもあるんですが(苦笑)
他にも、第3話で高畑一寸が「あぁ、弱い・・・」に対して漫画では俺は弱くないと言い放ったシーンが9話での彼がつのひめさまを描き続けている理由が自分も自分が描いている作品のファンだから。この話がめちゃくちゃいいなぁとか
5話で社長や、五百旗頭の物語はやっぱりロールモデルをみつけたからだよなぁとか。
9話で中田伯がデビューが決まって泣き崩れるシーンは彼の漫画が人に認められて、それは彼の主張が肯定された瞬間だからだよなぁとか。
いろいろとおもしろいと思うところがあるので、おすすめです。